【論文紹介】家族構成を考慮した孤独感と心の健康の関連
「孤独感」は、生活の形だけでは見えにくい? ――農村地域住民調査から考える、心の健康の手がかりについて解説。

私たちは、客観的な情報から心の状態を推測しがちです。
よくある気づきの例として、「顔色がよくない」「表情が暗い」といった変化が挙げられます。
こういった気づきは、メンタルヘルス支援として非常に重要です。
しかし一方で、
「あの人には家族がいるから大丈夫」
「地域のつながりがあるから問題ないでしょう」
といった生活の形だけで判断してしまうことはないでしょうか。
実際には、家族がいても、地域で暮らしていても、何か満たされない気持ちや孤独を感じることがあります。
▶農村地域での住民調査から
今回、秋田県内のA農村地域に住む20〜84歳の住民を対象に質問紙調査を行い、有効回答1,842名を分析しました。
その結果、孤独感と心の健康との間に一定の関連がみられました。
この研究でいう「孤独感」は、UCLA孤独感尺度短縮版という調査項目で測定された主観的な体験です。
孤独感とは、一般的に「個人の社会的関係のネットワークにおいて、重大な欠損が生じた時に生起する不快な経験」と定義されています。
いわゆる“社会的孤立”(人との接触やつながりの少なさ)とは必ずしも一致しません。
他者からは、つながりがあるように見えても、本人の主観的な体験として、孤独感が存在する場合があることを理解するのが重要だと考えています。
▶自殺念慮・心理的苦痛との関連
本研究の結果を以下に要約しています↓
①孤独を感じている人では、孤独を感じていない人に比べて、自殺念慮の有症率が有意に高いことが示された
②孤独を感じている人では、孤独を感じていない人に比べて、心理的苦痛を抱える者の割合が有意に高いことが示された
+ 家族構成だけでは説明できない側面
③家族構成(単身世帯/複数人世帯)で別々に解析すると、心理的苦痛については、単身・複数人世帯のいずれでも孤独感との同様の関連がみられました。
この結果は、家族構成にかかわらず、孤独感があると心理的苦痛に繋がる可能性を示唆しています。
※本研究は、横断研究という研究デザインを用いており、因果関係を示すものではありません。
▶心の健康支援への示唆
自殺予防や心の健康づくりでは、これまで社会的孤立などの客観的な指標が非常に重視されてきました。
しかし今回の結果は、それに加えて、主観的な孤独感という“1人1人の感情”にも目を向ける必要性を示唆しています。
孤独感は外から見えにくく、「困っているように見えない人」にも存在し得ます。
だからこそ、生活の形だけで判断せず、丁寧に声を聴く姿勢が、今後ますます重要になるのかもしれません。
▼ 論文の詳細はこちら
・Iwasawa A, et al. (2026). The association between loneliness, suicidal ideation, and psychological distress considering family compositions: A cross-sectional study in Japanese rural area. Scientific Reports.
・URL: https://www.nature.com/articles/s41598-025-96205-1
以下の記事でも本研究について解説しています。
公益社団法人 日本精神保健福祉連盟広報誌 51号. P.11~18
岩澤敦史, 野村恭子. 孤独・孤立とどう向き合うか:人口減少社会における精神保健対策の視点から.
URL: https://www.f-renmei.or.jp/publication/kouhoushi/pdf/kouhoushi51.pdf
(解説:岩澤 敦史)





